いくら追い充電しても12V弱 しか出せなくなったバッテリー 75D23R 、ダメもとで復活実験をしてみました。何分素人のやることですから結構無茶なこともありますが、実験ということで多めに見てください。
車載の通常の鉛バッテリーってどのようにして劣化するのでしょうか?
放電し電圧が下がっているだけなら、補充電をすれば復帰するように思いますが、放置時間が長かったり使い込んだバッテリーは、電圧は12Vあっても力が弱かったりすぐに始動不能になってしまいますね。
鉛バッテリーの充放電は二酸化鉛・海綿状鉛と硫酸とが、硫酸鉛と水になる反応を行き来することで電気を発生する化学反応です。 比重が下がるのは、放電の際に電解液の硫酸が水に変化していくためで、充電により硫酸に戻っていくことで比重が上がります。
ところがこの電極の硫酸鉛は、放電後すぐに充電できれば電解液(希硫酸)に戻るのですが、何もせずに時間を置くと電極表面に結晶化し付着します。そのため普通に充電しても次第に元に戻らなくなり、これが サルフェーション(不導体皮膜)という現象で、バッテリー自然劣化の一番の原因とされています。
サルフェーションが起きると硫酸鉛が電極を覆っていき、厄介なことにこの硫酸鉛は不導体であるため鉛蓄電池の内部抵抗が増大し流れる電流が徐々に低下していきます。
この状態で充電すると、電流が流れにくく電圧だけが上昇し、電極・液が発熱します。
こうなると充電量が不十分となり、放電時の電気容量は大きく減少します。 結果、充電しても電圧が定格電圧までに達することなく、放電能力の低下そして寿命が尽きた・・と判断されるのです。
サルフェーションは鉛バッテリーが製造され、電解液を入れた直後から発生し始めるため、場合によっては2~3年で寿命を迎えることもあります。(結晶化は、放電後24時間で始まってしまうという話もあります。)
つまりは、バッテリーの劣化防止や復活には、サルフェーションの防止や結晶化した硫酸鉛を除去することが必要となります。 こまめに車を使用したりして補充電をするのがサルフェーションを防ぐ基本になりますが、放電時間が長くなるほど高質化するため一度付いた硫酸鉛を落とすのは容易ではありません。
特に最近の自動車にはアイドリングストップ機能があるものが多く、信号の多い区間では頻繁にエンジンストップがかかり再始動でセルモーターを回すためバッテリーの負担も大きくなっています。
アイドリングストップ対応の専用バッテリーを搭載していますが、それでもチョイノリでエンジンの始動時間が短いと充電が追い付けず徐々に能力の低下を招きます。
自動的にアイドリングストップをしないように制御していますが、弱ったまま長時間放置するのはバッテリーにはよくない影響を与えます。
現在、方法として考えられるのは、以下の3つです。
1 化学的に落とす方法
・サルフェーション除去反応を促進させる物質を電解液に添加し、いっきに大電流を放電することでサルフェーションを除去する方法も知られています。 (例えば、硫酸などの酸性物質を反応促進剤として電解液中に加え、短絡に近い大電流放電することによりサルフェーションを除去)
・不導体膜を化学的に除去できる物質を添加する。
2 電気的に落とす方法
・パルス充電:定格の50パーセント程度まで放電させたのち、直流のパルス電圧をかけることで極板を傷めずに硫酸鉛の結晶を表面から少しずつ微粒子状に分解します。(電極に負荷をかけないよう、充電時間は8時間程度を目安にします。)
・専用のパルス充電器があり、充電時のみ電流を流して強制的にサルフェーションを剥離させるタイプと、充電時及び放電時も電流を流してサルフェーションの除去をおこなうタイプがあります。
3 物理的に落とす方法
・電極の洗浄・振動などで、サルフェーションを削り取るように除去する。 しかし、過度に除去しようとすると電極を損傷してしまい、逆効果となる恐れが大である。
があるようです。それらを駆使?して生き返るかどうか試してみます。(廃棄を前提にダメ元で実験します。)
( ATLAS NF75D23R で実験開始 )
最初に実験するバッテリーは、ミニバンで数年間使用(その間2回ほどバッテリー上がりをおこした)後のもの、再充電してミニユンボに乗せていたものです。(トータル5~6年もの)

・まず、最初の状態は、ミニユンボ(3気筒ディーゼルエンジン)のセルモーターが回らない、燃料ポンプや電装関係はかろうじて動作する。持ち帰って、電圧を測ると 10V を切っていました。
液量はギリギリセーフ、比重を測ってみます。(セルごとのばらつきあり、1.00前後)

この時点で本来なら廃棄処分となるのですが、実験ですからこの際いろいろやってみます。
使用した充電器

アマゾンでの激安品です、高価なものは買えませんので。
パルス充電は、リペアモード という設定らしく、比較的低い電圧と電流のパルスを18時間印加するとなっています。電圧電流と温度をモニターしており、冷却ファンも自動で動作します。
( 1日目 )
とりあえず、パルス充電器(ネットで購入した激安品)を繋いで充電開始、約7時間後、80パーセントの表示が出ているので、電圧を確認してみると、アレ? 10.5ボルト 減少しています。
バッテリーチェッカーを繋いでみると、内部抵抗が なんと28mΩ。(10mΩ以下が理想)
ここで、安物好きの筆者は、数年前に購入したまま引き出しの奥にあった「電撃ゲルマ錠剤」を6セルに1錠づつ投入し、再度充電開始。


7時間ほど充電してみた結果、11.7V になっていました。(電圧は上がっても、セルを回すほどの電流が流せるかどうかは今のところ不明)
夜も遅いので、一旦充電器を切り放置してみることに・・。
( 2日目 )
12~3時間放置した後、状態確認のため電圧を測定してみると、電圧低下(8.7V)、内部抵抗は50mΩと増加していました。
???、変わらないならわかるが悪化するなんて聞いてない・・(誰も言う訳がない!)
この時の各セルの比重、1.1以下が2セル、1.20が3セル、1.15が1セル、となっていました。
予想ですが、特定のセルが死にかけ又は死んでいるようです。(何かまずいことをしたのかなぁ)
ここで少し大胆なことをしてみます。
各セルの電解液を比重ごとに分け全部抜き取りました。 とりあえず、スポイドで取れるだけ取ってみました。

スポイドで抜けなかった分はバッテリーをひっくり返し抜きました、すると黒鉛を混ぜたような電解液が出てきました。

沈殿していた落ちた黒いものはなんでしょうか。メーカーによっては、パワフルペーストと言われるカーボン微粒子が極板に添加されており、これが電極から剥がれてバッテリー液が黒く濁っているのかもしれない。おそらくですが、電極についていた硫酸鉛ではないかと思います。過度の充電はバッテリー容量を極端に減少させてしまいます。
ガラス瓶にとった黒い電解液は、一晩おいておけばビン底に不純物が溜まりきれいな電解液と分けることができました。
( 3日目 )
少々荒っぽくて危険ですが、電極を水道水で洗浄してみます。
空っぽになったバッテリーを洗浄してみます。3 物理的に落とす方法 の実践です。

超音波洗浄機のようなものがあればいいのですが、そんな上等なものはありません。水を入れてガシャガシャし排出します。ジェット水流を勢いよくぶっ込んだりもしてみました。
あまり乱暴に扱って電極を痛めてしまっては元も子もありません。
黒い沈殿物がしつこく出てきます。 水がきれいになるまでひたすら繰り返しです。
きれいになったら、中の水を残らずきれいに抜き取ります。(この時、注入口から水蒸気のようなものが少し出ていたので、風通しの良いところで作業します。)
その後、抜き取っておいた電解液(セルごとに分けておいた)で比較的比重の高かった電解液を各セルに均等に注入したのですが、液面が基準より低かったので、ろ過してきれいな残りの電解液を入れ Lowレベルギリギリまでになりました。
ここで、再度パルス充電器で充電(18時間)してみましたが、10.5V までしか復活しませんでした!。残念。
バッテリーの特定セル(3つほど)の温度がかなり上昇していたので、充電器を外して変化を観ます。
( 4日目 )
一晩放置している間に何と 6V台まで電圧が低下していました。 この状態では、バッテリーチェッカーも使えません。
適度に放電させた後、通常充電をしてみます。 適度な濃度の希硫酸はありませんので、ゲルマニウム入り補充液を追加で各セルに注入します。 本当は電解液を新しいもの(37%の希硫酸)に交換したいのですが、入手が困難なので補充液を使用します。(比重が低いのが何とも中途半端です。)
8時間ほどの充電で8V台まで戻りましたが、バッテリー本体が結構熱くなってきたので充電を停止し、また一晩放置してみます。
そして、
大変なことに気がついてしまいました。結果、やらかしてしまいましたね。
大ボケをしてしまいました、てっきり「リペアモード(パルス)」で充電していると思ってましたがよくよく見ると、通常充電モードになっていました。(なんでランプ表示をちゃんと見なかったのか・・。)
意気消沈で明日に持ち越しです。 この4日間、なにをしていたのやら・・。
( 5日目 )
バッテリーの電圧を確認してみると、何と2Vでした。 こりゃあ完全に逝っちゃったかなぁ!
別の手作り充電器で、18V2A程度で2時間ほど強制充電しても、電解液の比重も全然上がらないし電圧も上がらなくなってしまいました。

9.85Vこれが限界のようです。
バッテリーの寿命もあるのでしょうけど、おそらくいろいろやって電極を痛めてしまったんじゃないかと思います。
正規の比重の電解液を入れて試したいところですが、入手が不可能ですので断念します。
水道水をぶっ込んでの電極の洗浄はやらないほうがいいみたいでした。(チャンチャン♫)
このバッテリーをこの後どうするかはゆっくり考えるとして、
気を取り直して、あと2つある「ほぼ死のバッテリー」を「リペアモード」で充電してみます。
制御弁付シールド・バッテリー(PE12V40)18年もの

電動のシニアカー(ラクーター)に積んであった制御弁付シールド・バッテリー(PE12V40)で、通常充電(付属の充電器)で充電できなくなって5年ほど放置していたものです。使用開始年不明)
ほぼ死というより、死んでいるかも・・。
制御弁付シールド・バッテリー(PE12V40)40A/20時間率 CCA標準値がどれくらいなのかネットで調べても正確には分からないのですが、とりあえずバッテリーチェッカーの表示値を書いてみます。
令和元年頃までは辛うじて走行できていたんですが、メンテナンスフリータイプで現在リペア前の電圧は、№1が5.6V、№2が6.8Vまで低下していました。
同じものが2個あり同時進行です、シールドバッテリーなので液状態がわからずとりあえず再生実験開始です。
( 6日目 )
リペアモードで(指定時間18時間)
№1 開始前:5.6V リペア充電後 12.2V バッテリーチェッカーでのCCA表示:48そこそこ。
12V仕様のカーポリッシャーは元気よく回りますが、放電能力はかなり低いでしょうね。この状態で放置し、次のバッテリー
№2 開始前:6.8V リペア後 11.9V
この充電器のリペアモードは、18時間断続的にパルスを掛けるようです。

( 7日目 )
作業していて、気が付いたのですが、バッテリーの取付年数がかすかに読み取れました。
「平成17年10月・・」まで読み取れました・・・。?!! 何と18年もののバッテリーということです。まあ、パルス充電器の効果の実証実験で始めたので結果はどうであれとりあえず、やるだけやってみます。 (この辺りから、半ばやけくそ気味)
№1、№2 1日ほど放置し、電圧の変化を見てみます。

そんなに大幅な低下はありませんでした。
ここで、10V程度まで放電させてみます。 適当な負荷を掛けるため、カーポリッシャーを繋いで放置しておきます。(カーポリッシャー使用時の電流値は、1.3Aほどです。)
正確には測っていませんが、3~4時間動かしていたと思います。やや回転が落ちてきました。
放電後、再度リペアモードで18時間開始です。(№1№2を交互に充電・放電させています。)
今度は、負荷にDC-ACインバーター(1300W・MAX)を繋いでみます。100V出力側には確認用で60Wの白熱灯を付けてあります。(このインバーターは、AC出力側が無負荷でも、インバーター自体は発振し続けているので、12Vの入力はどんどん消費していきます。20年ほど前に購入した安物ですから。)

約20分ほどで、電圧低下のアラームが鳴り始めました。放電能力はかなり低下しているのがよくわかります。白熱灯も100Vが不安定なせいか軽く明滅しています。
再度リペアモードで18時間開始です。(こんな感じで、№1№2を交互に充電・放電させています。)
これを、4回ほど繰り返しました。

結果は、多少の上昇はありましたがあまり変化無しといったところです。
CCA表示値は、№1が74.82です。№2が50代・・(低かったので写真を撮っていませんでした。)
どの程度正確化は不明ですが、おそらく正規の放電能力の5分の1以下でしょう。
ここで、液補充不要のこのバッテリーのフタをこじ開けてみます。 6セルとも電解液らしいものは見えません、見えるのは電極のみ。(ゲルタイプなのかな? バッテリーの詳細規格不明)
やって良いのか悪いのかわかりませんが、ここに補充液を少し入れてみます。もとよりやけくそ気味なので怖いものなしです。(爆発の危険性はありますが、敢えて目をつむります。自己責任ですから)
№1・2ともに、電極上部ギリギリのところまで電解液を補充してパルス充電してみます。 17時間後・・・

へ~っ! №1で 133.7 CCA値が上がってますね~。 それでも、正規の能力の3分の1程度でしょう。
№1はこのような変化が出ましたが、№2は逆に低下していましたのでここで脱落終了となりました。

1300WDCACインバーターとカーポリッシャーを繋いで、放電時間を見てみました。
この時のバッテリー放電電流は、13Aほどでした、約15分ほどでインバーターのアラームが鳴り始めAC100Vが少し不安定になってきました。
カーポリッシャーは元気よく回っています。カーポリッシャーだけなら数時間はいけそうでした。
結果、まあ当然ながら生き返りは無理でしたが、消費電流の少ないLED照明になら結構使えそうなので、開拓中の山へ持っていき照明(12V専用照明)の電源として再利用しようと思っています。
因みに、サルフェーション除去をうたったカー用品は、劣化したバッテリーではなく使用中のバッテリーに使用し寿命を少しでも伸ばすという使い方をするのが効果的だと思います。
素人のDIY程度では、サルフェーションを除去するのは先ず無理だと考えた方がよいようです。
安全性を無視したこのようなお遊び実験は危険が伴いますので、真似しないほうがよいと思います。
(どうしてもやってみたいという方は、自己責任でお願いします。)
バッテリー液(電解液)の処理方法
バッテリー液(電解液)は希硫酸なのでそのまま下水に流してはいけません、個人で処理したい場合は環境に影響がないよう中和する必要があります。
【中和作業】
中和剤には「 重曹(炭酸水素ナトリウム) 」を使用します。掃除のときによく使うやつです。
電解液 100 cc に対して 重曹 約 80 g が必要です。(少々多くても大丈夫です、むしろ多めがいいかも) ホームセンターなどでも入手できます。
作業時は、保護めがね、ゴム手袋を着用し、屋外などの風通しの良い安全な場所で行ってください。取扱いを誤ると、やけどや失明のおそれがあります。 また、中和の際に炭酸ガスが発生しますので注意してください。
1.処分したい電解液を、電解液容量の 3~4倍の水を入れたポリバケツに入れます。
(金属容器は電解液によって腐食します。)
2.中和に必要な量の「 重曹 」をゆっくり加え、かき混ぜながら中和させます。
3.中和させた液体は廃棄可能です。
ガラス瓶や専用容器などで保管する時は、十分注意し表書きをしておきます。
何でもやってみようの「ひまわり工房」では、いろいろなことにチャレンジしたいと思います。
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